悪性リンパ腫・MALTリンパ腫

悪性リンパ腫・MALTリンパ腫とは

悪性リンパ腫は、血液細胞の一種である「リンパ球」ががん化して無制限に増殖する病気の総称です。リンパ球は、細菌やウイルスなどの異物から体を守る免疫システムにおいて重要な役割を担っています。これらのリンパ球は、リンパ節、脾臓、胸腺、骨髄といったリンパ組織だけでなく、全身のあらゆる臓器に存在するため、悪性リンパ腫も体の様々な場所に発生する可能性があります。

悪性リンパ腫は、大きく分けて「ホジキンリンパ腫」と「非ホジキンリンパ腫」の2つに大別されます。
日本では非ホジキンリンパ腫の割合が圧倒的に多いです。非ホジキンリンパ腫は、がん化したリンパ球の種類や進行の速さ、細胞の形態などによって非常に多くの病型に細かく分類されます。MALTリンパ腫(マルトリンパしゅ)は、この非ホジキンリンパ腫の中のB細胞リンパ腫の一種です。

MALTは、胃腸などの消化管、気管支、唾液腺、甲状腺、眼窩(目の周り)といった粘膜組織や腺組織に存在するリンパ組織で、外部からの異物に対する免疫応答の最前線として機能しています。MALTリンパ腫は、これらのリンパ節以外の場所に発生しやすいのが特徴です。

 

主な症状

悪性リンパ腫の症状

悪性リンパ腫の症状は、病型や発生部位、進行度によって様々です。

全身症状
  • 原因不明の発熱(通常38℃以上)
  • 体重減少(過去6ヶ月以内に10%以上の減少)
  • 寝ている間にびっしょりとかくほどの大量の寝汗
発生部位による症状
  • 消化管
    腹痛、腹部膨満感、下血、便秘、嘔吐など
  •  胸部
    咳、呼吸困難、胸痛、顔や首のむくみなど
  • 皮膚
    発疹、かゆみ、しこり、潰瘍など
  • 中枢神経(脳・脊髄)
    頭痛、吐き気、けいれん、麻痺など
  • 骨髄
    貧血症状(めまい、息切れ)、出血傾向、感染しやすくなるなど
  • その他
    全身倦怠感、食欲不振など

 

MALTリンパ腫の症状

MALTリンパ腫の症状は、発生した臓器によって異なります。
進行が緩やかであるため、早期には無症状であることも少なくありません。

悪性リンパ腫に見られる全身症状(発熱、体重減少、盗汗)は、MALTリンパ腫では比較的まれです。

胃MALTリンパ腫
  •  胃痛、みぞおちの不快感
  •  胃もたれ、食欲不振
  •  吐き気、嘔吐
  •  胸やけ
眼付属器MALTリンパ腫
  • 眼の充血、腫れ
  • 涙が出る
唾液腺MALTリンパ腫
  • 唾液腺(耳下腺、顎下腺など)の腫れ
肺MALTリンパ腫
  • 咳、痰
  • 胸部X線写真での異常陰影
甲状腺MALTリンパ腫
  • 首の腫れ
  • 声のかすれ

     

    検査方法

    悪性リンパ腫の検査

    悪性リンパ腫の診断と病型分類、進行度の評価のために、以下のような検査が行われます。

    • 問診と身体診察
      症状の経過、既往歴、家族歴などを詳しく伺い、リンパ節の腫れや肝臓・脾臓の腫大などを確認します。
    • 血液検査
      • 血球算定
        白血球、赤血球、血小板の数やバランスを調べ、貧血や異常なリンパ球の増加がないか確認します。
      • 生化学検査
        病気の勢いや治療効果の指標となることがあります。
    • 画像検査
      • CT検査
        全身のリンパ節の腫れや、他の臓器への病変の広がりを評価します。
      • PET-CT検査
        がん細胞がブドウ糖を多く取り込む性質を利用して、全身のがん細胞の活動部位や広がりをより詳細に調べる検査です。
      • MRI検査
        特定の部位(特に中枢神経)の病変を詳しく調べる際に用いられます。
      • 超音波検査(エコー検査)
        体表に近いリンパ節や腹腔内の臓器を簡便に評価できます。
    • 病理組織学的検査
      確定診断に必須の検査です。腫れているリンパ節や病変が疑われる組織の一部を採取し、顕微鏡で詳しく調べます。これにより、悪性リンパ腫であるかどうかの診断だけでなく、詳細な病型分類も行われます。
    • 骨髄検査
      悪性リンパ腫細胞が骨髄に浸潤していないかを調べるために行われます。
      局所麻酔下に腰の骨から骨髄液や組織を採取します。

    ※当院で行われていない検査は、提携医療機関又はご希望の医療機関をご紹介させていただきます。

     

    MALTリンパ腫の検査

    MALTリンパ腫の診断も、基本的には他の悪性リンパ腫と同様の検査が行われますが、特に以下の点が重要です。

    • 発生部位に応じた内視鏡検査と生検
      それぞれの部位に応じた方法(例:胃カメラ、気管支鏡、眼科的診察と生検など)で、病変が疑われる部位から組織を採取して病理診断を行います。
    • ヘリコバクター・ピロリ菌検査(胃MALTリンパ腫の場合)
    • 病理組織学的検査
      生検で得られた組織を用いて、リンパ腫細胞の形態、免疫染色、遺伝子検査を行い、MALTリンパ腫の確定診断と他のリンパ腫との鑑別を行います。
    • 進行度評価のための検査
      CT検査、PET-CT検査、骨髄検査などを行い、病変の広がりを評価します。MALTリンパ腫は局所的な範囲にとどまっていることが多いですが、まれに多臓器に広がっていることもあります。

    ※当院で行われていない検査は、提携医療機関又はご希望の医療機関をご紹介させていただきます。

     

    治療方法

    悪性リンパ腫の治療方法

    悪性リンパ腫の治療は、正確な病型、進行度、患者様の年齢や全身状態、合併症の有無などを総合的に判断して決定されます。
    治療法は近年著しく進歩しており、治癒を目指せる病型も増えています

    • 化学療法(抗がん剤治療)
      最も中心となる治療法です。多くの場合、複数の抗がん剤を組み合わせて行われます。
    • 分子標的治療薬
      特定のリンパ腫細胞の表面にある目印(抗原)や、がん細胞の増殖に関わる分子を標的に作用する薬剤で、化学療法と併用されることが多いです。
    • 放射線治療
      がん細胞に放射線を照射して破壊する治療法です。
      局所的な範囲にとどまっている病変や、化学療法の効果を高める目的、症状緩和の目的で行われます。
    • 造血幹細胞移植
      大量の化学療法や放射線治療を行った後に、あらかじめ採取しておいた自分自身の造血幹細胞、あるいはドナーから提供された造血幹細胞を移植する治療法です。
      難治性や再発性の悪性リンパ腫に対して行われることがあります。
    • 経過観察
      進行が非常にゆっくりとした低悪性度のリンパ腫で、症状がない場合には、積極的な治療を開始せずに定期的に検査を行いながら慎重に経過を見ることがあります。
    • 免疫療法
      自身の免疫力を高めてがん細胞を攻撃する治療法も、一部の病型で研究・応用が進んでいます。

    ※当院で行われていない治療は、提携の医療機関又はご希望の医療機関をご紹介させて頂きます。

     

    MALTリンパ腫の治療方法

    MALTリンパ腫の治療法は、発生部位、進行度、ピロリ菌感染の有無(胃MALTリンパ腫の場合)、患者様の状態などを考慮して選択されます。

    • 胃MALTリンパ腫(ヘリコバクター・ピロリ菌陽性の場合)
      ピロリ菌除菌療法が第一選択の治療法です。除菌後も定期的な内視鏡検査で経過観察が必要です。
    • 胃MALTリンパ腫(ピロリ菌陰性、または除菌療法で効果がなかった場合)および胃以外のMALTリンパ腫
      • 放射線治療
        局所的な範囲にとどまってい病変に対して非常に有効な治療法です。
        比較的少ない線量で高い治療効果が期待でき、副作用も比較的軽度です。
      • 経過観察
        無症状で病変が小さく、進行が非常にゆっくりしている場合には、積極的な治療を行わずに定期的な検査で注意深く経過を見ることもあります。
      • 化学療法・分子標的治療薬
        病変が広範囲に及んでいる場合、症状がある場合、放射線治療が適さない場合、あるいは再発した場合などに行われます。
      • 手術
        出血が止まらない、消化管が閉塞しているなどの合併症がある場合に検討されることがあります。

    ※当院で行われていない治療は、提携の医療機関又はご希望の医療機関をご紹介させて頂きます。

     

    治療実績

    あきる野市や近隣にお住まいの方にご支持いだき、数多くご来院いただいております。

     

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