感染性腸炎・偽膜性腸炎

感染性腸炎・偽膜性腸炎とは

これらはの疾患はどちらも腸の炎症を伴う疾患ですが、原因や治療法が異なります。

感染性腸炎

感染性腸炎は、細菌、ウイルス、寄生虫などの病原体が腸に感染することで引き起こされる炎症性の疾患です。これらの病原体は、汚染された飲食物の摂取や、感染者との接触などを介して体内に侵入します。
一般的に、発展途上国など衛生環境が整っていない地域で多く見られますが、日本のような先進国でも食中毒などを原因として発生します。
特に、乳幼児や高齢者、免疫力が低下している方は重症化しやすいため注意が必要です。

主な原因となる病原体には、以下のようなものがあります。

  • 細菌性
    サルモネラ菌、カンピロバクター、病原性大腸菌(O157など)、腸炎ビブリオ、赤痢菌、コレラ菌など
  • ウイルス性
    ノロウイルス、ロタウイルス、アデノウイルスなど
  • 寄生虫性
    赤痢アメーバ、ランブル鞭毛虫、クリプトスポリジウムなど

感染経路としては、以下が挙げられます。

  • 汚染された食品(生肉、加熱不十分な魚介類、生卵など)や水の摂取
  • 感染者の便や吐瀉物に触れた手指を介した経口感染
  • ペットからの感染

     

    偽膜性腸炎

    偽膜性腸炎は、主に抗菌薬(抗生物質)の使用が誘因となり、腸内細菌のバランスが崩れることで細菌が異常に増殖し、この菌が産生する毒素によって大腸粘膜に炎症と偽膜(黄白色の苔のような付着物)が形成される病気です。

    主な原因には、以下のようなものがあります。

    • 抗菌薬や胃酸分泌抑制薬の使用
    • その他
      高齢、長期入院、消化管手術歴、免疫抑制状態、院内感染

     

    主な症状

    感染性腸炎の症状

    感染性腸炎の主な症状は、原因となる病原体によって多少異なりますが、一般的には以下のような症状が現れます。

    • 下痢
      最も一般的な症状で、水様便や泥状便、血便など。
    • 腹痛
      へその周りや下腹部に、差し込むような痛みや持続的な痛み。
    • 吐き気、嘔吐
      特にウイルス性腸炎でよくみられる。
    • 発熱
      細菌性腸炎では高熱が出ることがありますが、ウイルス性では軽度の場合もある。
    • その他の症状
      頭痛、倦怠感、食欲不振、筋肉痛など。
      脱水症状(口の渇き、尿の減少、皮膚の乾燥、めまいなど)が進行すると、意識障害やショック状態に陥ることもあり、特に乳幼児や高齢者は注意が必要です。

     

    偽膜性腸炎の症状

    偽膜性腸炎では、抗菌薬使用中または使用後数日~数週間(時には数ヶ月後)に以下のような症状が現れます。

    • 頻回の下痢
      液体状の便が多く、特有の強い臭いを伴うことがあります。
    • 腹痛
      特に下腹部痛が多いです。
    • 発熱
      軽度から高熱まで様々です。
    • お腹の張り、吐き気、食欲不振
    • 血液検査での白血球増多
    • 重症化した場合
      大量の偽膜(黄白色の苔のような付着物)の形成、腸管麻痺腸内容物の正常な通過が阻害される病気)、腸管穿孔(腸管に穴が開く病気)、敗血症感染症により体の防御反応が制御不能になり、臓器に障害が起きる病気)などをきたし、生命に関わることがあります。

     

    検査方法

    感染性腸炎や偽膜性腸炎が疑われる場合、原因を特定し、適切な治療を行うために以下のような検査が行われます。

    • 問診
      食事内容、海外渡航歴、周囲の感染状況などを詳しくお聞きします。
      偽膜性腸炎が疑われる場合、抗菌薬の使用歴(種類、期間、投与時期)の確認が重要です。
    • 便検査
      便培養検査・迅速抗原検査・PCR検査・虫卵検査・原虫検査などを行います。
      偽膜性腸炎が疑われる場合、毒素検査や抗原検査を行います。
    • 血液検査
      白血球の数などの炎症反応の程度を確認します。
    • 画像検査
      腹部X線検査・エコー検査・大腸内視鏡検査などを行います。

     

    治療方法

    感染性腸炎の治療

    感染性腸炎の治療は、原因となる病原体や症状の重症度によって異なりますが、基本的には対症療法が中心となります。

    対症療法
    • 水分補給
      下痢や嘔吐による脱水を防ぐため、経口補水液やスポーツドリンクなどでこまめに水分を補給します。
      脱水がひどい場合や経口摂取が困難な場合は、点滴による水分補給が行われます。
    • 食事療法
      症状が強い間は絶食とし、症状が落ち着いてきたら、おかゆやうどん、すりおろしたりんごなど、消化の良いものから少量ずつ摂取を開始します。
      脂肪分の多い食事や刺激物、乳製品は避けるようにします。
    • 安静
      体力の消耗を避けるため、十分な休息をとります。
    薬物療法
    • 整腸剤
      腸内環境を整え、下痢の症状を和らげるために処方されることがあります。
    • 抗菌薬(抗生物質)
      細菌性腸炎が原因で、症状が重い場合や血便がある場合、免疫力が低下している患者様など、医師が必要と判断した場合に限り使用されます。
    • 止痢薬(下痢止め)
      医師の指示に従って使用します。特に細菌性腸炎(O157など)では原則として使用しません。
    • 制吐剤・解熱鎮痛剤など
    • その他
      赤痢アメーバなどの寄生虫が原因の場合は、駆虫薬が使用されます。

     

    偽膜性腸炎の治療

    偽膜性腸炎の治療には、以下のようなものがあります。

    • 原因となった抗菌薬の中止または変更
      可能であれば、これが最初のステップです。原因薬を中止するだけで軽快することもあります。
    • 毒素に対する抗菌薬療法
    • 水分や電解質の補給、栄養管理
    • 再発への対応
      偽膜性腸炎は治療後に再発することが約20~30%と比較的多い疾患です。
      再発時には、初回とは異なる薬剤を選択したり、より長期間の治療を行ったりすることがあります。
    • 糞便微生物移植
      難治性または頻回に再発する偽膜性腸炎に対して、健康な人の便から抽出した腸内細菌叢を患者様の腸内に移植する治療法で、高い治療効果が報告されています。
      実施できる医療機関は限られています。

     

    治療実績

    あきる野市にお住まいの方を中心に、遠方からもたくさんの患者様にお越しいただいております。

     

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